の中に
仏陀《ぶっだ》はとうに眠っている。
路《みち》ばたに枯れた無花果《いちじゅく》といっしょに
基督《キリスト》ももう死んだらしい。
しかし我々は休まなければならぬ
たとい芝居《しばい》の背景の前にも。
(そのまた背景の裏を見れば、継ぎはぎだらけのカンヴァスばかりだ?)――
[#ここで字下げ終わり]
けれども僕はこの詩人のように厭世的《えんせいてき》ではありません。河童たちの時々来てくれる限りは、――ああ、このことは忘れていました。あなたは僕の友だちだった裁判官のペップを覚えているでしょう。あの河童は職を失った後《のち》、ほんとうに発狂してしまいました。なんでも今は河童の国の精神病院にいるということです。僕はS博士《はかせ》さえ承知してくれれば、見舞いにいってやりたいのですがね……。
[#地から3字上げ](昭和二年二月十一日)
底本:「河童・或る阿呆の一生」旺文社文庫、旺文社
1966(昭和41)年10月20日初版発行
1984(昭和59)年重版発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:もりみつじゅんじ
校正:かとうかおり
1999年1月24日公開
2004年2月26日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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