です。
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ポーは詩は快楽の為めに作られるものだといつてゐる。詩の目的は其処にのみあるといつてゐる、勿論、詩とは云つても、それは芸術を代表さして云つてゐるのです。そして快楽は何処から生れるかといふに、それは美を感ずることからだといふのです。この主張は、彼の芸術の為めの芸術の先駆を為したものです。
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ポーは、だから所謂教訓主義には絶対に反対しました。ポーの美に対する考へ方は、その最も高いものはメランコリツクなものである。といふのでした。ポーが、この芸術の為めの芸術を主張した当時は、何等省みられませんでしたが、やがて、フランスに影響し露英|悉《こと/″\》くその風靡するに任せたことは御存じの通りです。
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また彼は Totality of effect といふ言葉を使ひました。彼はこの見地から、詩は一気に読み得るものでなければならないと主張しました。当時対岸の英国には長詩が非常な勢ひを持つてゐたのですから、その時、敢然として斯《か》う云ひ得た彼の卓見と自信とは偉とすべきです。
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ポーは彼《か》の失楽
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