の方から銭を出して、さあこれを上げるから読んで呉れとなるべきではなからうか。それなのに、うかつにも銭を出したり読まされたりしてゐることは全く馬鹿げてゐる。それよりも五十銭で何か食ふ方が利口だ――と。殊に「勉強」のためとあつてはなほのことさうした場合が多さうではないか、と。
 又、本そのものの内容に至つては、それを読んでゐる間の煙草代コーヒー代は勿論一日又は二日の生活費を出してまだ足らぬといふしろものの如何に多きや云云――といふ次第ではないでせうか。こんなこと言つてわるいんですけれども――。

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 贈呈されたもののお礼、季節の見舞ひのお礼はいつも筆ぶしよう。例へば月末に金を取りにくるから新聞を取るのをやめや[#「や」に「ママ」の注記]うと思つてゐるといふやうなわけ、米屋酒屋へも亦同じ。おゆるし下さい。
[#地付き](一九三〇、八月十日)
[#地付き](詩神第六巻十号 昭和5年10[#「10」は縦中横]月発行)



底本:「尾形亀之助詩集」現代詩文庫、思潮社
   1975(昭和50)年6月10日初版第1刷
   1980(昭和55)年10月1日第3刷
初出:「詩神 第六巻十号」
 
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