のことです。いつものように車庫の扉《とびら》が外からギイッと開《あ》くと、二人《ふたり》は、びっくりして眼を見張りました。
そこには、モーティが、赤い塗りたてのサイドカアまでつけて、いせいよく立っているのです。
二人は、嬉《うれ》しくって暫《しばら》くは、ものも言えませんでした。するとモーティが、すっかり大人《おとな》らしくなった太い声で言いました。
「しばらく。――お父《と》ッつァん。おッ母《か》さん。僕、妹をつれて来たからよろしく頼むよ。」
ポピイもピリイも、びっくりしてしまいました。何て、ぞんざいな口をきくのでしょう。あんなに心配をさせておきながら、まだお行儀も直らないのかしら、困ったものだと思いました。しかし、それよりも、第一に、長い間欲しがっていた女の子までも出来たのだから、ありがたいことだと思い直して、モーティには別に、こごとも言いませんでした。
しかしモーティも馬鹿ではありません。お父さまやお母さまが、何《なん》にもおこごともおっしゃらず、前の通りにやさしくして下さるのを見ると、自分の悪かったことが、しみじみと分って来ました。モーティは、今では、もとのように可愛《かわい》いすなおないいモーティです。そして、四人で一つの車庫の中に、仲よく賑《にぎ》やかに暮しております。
底本:「赤い鳥傑作集」新潮文庫、新潮社
1955(昭和30)年6月25日発行
1974(昭和49)年9月10日29刷改版
1989(平成元)年10月15日48刷
底本の親本:「赤い鳥」復刻版、日本近代文学館
1968(昭和43)〜1969(昭和44)年
初出:「赤い鳥」
1926(大正15)年11月号
入力:林 幸雄
校正:鈴木厚司
2002年1月3日公開
2005年9月25日修正
青空文庫作成ファイル:
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