こびで、おじぎをして、
「さようなら。灯《あかり》さんにもさようなら。」と言って、どんどんかけてかえりました。
「よし子さんは、まだお目ざめじゃアないでしょうね。」と、オウムは、おうちへかえるなり、いきをはずませてききました。
「ああまだだよ。もらって来た?」と、イヌとネコが、目をひからせてききました。
「ごらんなさいよ。」と、オウムは、くびのくさりを見せました。
「ほう、えらいえらい。」
「ああ、よかった。」と、イヌとネコは、かわりがわり言いました。
「僕なんか、もうオウムさんのまえではいばれないよ。」と、イヌは、さっき、オウムをばかにしたのを、あやまるように言いました。オウムは、にこにこ笑いながら、よし子さんの枕《まくら》もとへ、くびかざりを、そっと、おいときました。
 イヌや、ネコや、あるき人形や白熊へのおくりものは、おじいさんがちゃんとそろえて、よし子さんのおねだいの下へおいていったのです。
「さあ、もう、お目ざのおうたをうたってもいい時間ね。」と、オウムは、そう言って、うつくしい声で、夜中につくったあたらしい、朝のおうたをうたいました。
 ひとりでに、流れて出て来る、あかるい、ほがらかなそのうたのふし[#「ふし」に傍点]は、サンタクローズのおじいさんからのおくりものでした。
 よし子さんは、そのおうたで目をさましました。よし子さんが、まくらもとに小さな金のくびかざりを見つけて、おどり上ってよろこびました。
 よし子さんにも、イヌにもネコにも、オウムにも、それはそれはたのしいクリスマスでした。



底本:「赤い鳥傑作集」新潮文庫、新潮社
   1955(昭和30)年6月25日発行
   1974(昭和49)年9月10日29刷改版
   1989(平成元)年10月15日48刷
底本の親本:「赤い鳥」復刻版、日本近代文学館
   1968(昭和43)〜1969(昭和44)年
初出:「赤い鳥」
   1928(昭和3)年12月号
入力:林 幸雄
校正:鈴木厚司
2001年10月31日公開
2005年9月25日修正
青空文庫作成ファイル:
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