お部屋《へや》の中はしいんとして、夜《よる》が、だんだんふけていきました。
 しばらくすると、屋根の上に、みしみしという足音が聞えました。イヌは、はっと目をさまして聞耳を立てました。オウムは、ずっと、ねないで、まっていたのです。
「掃除はきれいに出来たかな。」
 サンタクローズのおじいさんは、こう言いながら、えんとつの上にいたネコを背中にしょって、すらりと、お部屋へ下りて来ました。そして、ポケットから、かきつけを出して、
「ええッと、よし子さんは何がほしいのだったかな。」と、言い言い読みかえしました。
「私《あたし》の歩き人形にはお靴《くつ》を二つ。
 白い熊《くま》ちゃんには毛皮の帽子を。
 ネコにはちりちりと鳴る鈴を。
 イヌにはぴかぴか光る首輪を一つ。
 オウムにはあたらしいうたのふし[#「ふし」に傍点]を
 それから、私《あたし》には……」
 サンタおじいさんは、そこでつまってしまいました。暗くて字がよく見えないので、かきつけを眼のそばによせて、
「はてな、よし子さんのほしいものは何だったっけな。」と、おじいさんは考えこみました。
「小さな金のくびかざりです。」と、イヌとネコとオウムとが、一どに言いました。
「小さな金のくびかざり? おお、そうだった。昨夜《ゆうべ》ちゃんと、つくって……それから、どうしたっけな。」
 おじいさんは、少しあわてて、ポケットというポケット……円《まる》いポケット、四角なポケット、上のポケット、下のポケットを……さがしまわしました。でも、くびかざりはどこにも見つかりません。
「おやおや、どうしたんだろう。もって来ないはずはないのだが……はてなはてな。」
 おじいさんは、しきりに首をひねりました。
 イヌとネコは心配して顔を見合せました。自分たちのもらうものはどうでもいいけれど、だいじなお嬢さまが、あれほどほしがっていらっしゃる、くびかざりですから、どうしてもさがし出してもらわなければなりません。
 おじいさんは帽子もとって見ました。靴もぬいで見ました。しかし、どこにもありません。ネコやイヌやオウムは、それこそ、がっかりしてしまいました。
 と、ふいに、「おお、そうだ。」と、おじいさんは、むねをたたきました。「思い出したよ。あれはわしの家《うち》のコウノトリのくびにかけてある。かけたまま忘れて出て来たんだよ。」
 イヌとネコ
前へ 次へ
全4ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小野 浩 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング