修善寺漱石詩碑碑陰に記せる文
狩野亨吉
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巍々タリ此石標スルニ杳々超脱ノ詞ヲ以テス嗚呼是レ亡友漱石ヲ追懷セシムルモノニアラズヤ漱石明治四十三年此地菊屋ニ於テ舊痾ヲ養フ一時危篤ニ瀕スルヤ疾ヲ問フ者踵ヲ接ス其状權貴モ如カザルモノアリ漱石ノ名聲四方ニ喧傳セルハ實ニ此時ニアリトス蓋シ偶然ノ運行ニ因ルト雖モ忘ルベカラザルコトナリ夫レ病ハ身ヲ化シ身ハ心ヲ制ス漱石生死ノ間ニ彷徨シテ性命ノ機微ヲ捕捉シ知察雋敏省悟透徹スルトコロアリ漱石ノ思想ノ轉向躍進ヲ見タルハ亦實ニ此時ニアリトス固ヨリ必然ノ結果ニ屬スト雖モ忘ルベカラザルコトナリ漱石ノ修善寺ニ於ケル洵ニ名ト實ト共ニ忘ルベカラザルモノヲ得タリ漱石逝キテヨリ茲ニ十七年此地ノ有志相謀リ其忘ルベカラザルモノヲ明カニシ併テ仰慕ノ至情ヲ表セント欲ス乃チ碑ヲ公園ニ建テ漱石當時排悶ノ一詩ヲ勒ス字ハ之ヲ擴大セルモノ由テ以テ片鱗ヲ存シ記念ト爲スニ足ル顧フニ漱石深沈ニシテ苟合セズ靜觀シテ自適ス往々流俗ト容レザルモノアリ彼若シ知ルコトア
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