こである。食物は何よりも大事と氣付いたら、武士は武士のまま歸農する。而して其中から必要に應じて工商を營むものを作ることとする。しかし誰一人徒食の遊民たることを許さない。皆勞作して食ふこととする。苟くも武士たるものは末代生活の保證を得てゐるのであるから愛國奉公の志篤からざるを得ず。依て所得を政府に納め、其代り生活に必要なる支給を受くる事を條件とするのである。政府に於ては其意を領し、尤も公平なる配給法を工夫し、暴富奢侈等罪惡の原因となるべきものを發生せしめざることに注意する事は云ふ迄もない。而て歳計の餘裕を以て公共施設を整頓せしめ、國民全體の幸福を増進せしむることに盡力し、以て共存共榮の實を擧ぐるのである。偖て其政府はどうする。是は大和民族の意志に尋ねる。かくして出來上るところの新日本は武士道以上の精華を發揮して譽れを萬國に輝し、人類をして皆我日本に傚ふことに至らしむるであらう。
 以上の案は云ふ迄もなく罪惡を未然に防ぐ目的を以て提出するのである。安藤は戰を好まない男であるから、武士を農列に引摺落さうとするのであるが、私は武士側が覺醒して任意歸農する如く説いたといつた違のあるばかりで、成立
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