時々パッと日があたると、木の影が雪の上にさす。何という美しさであろう。スキーは例の通り谷を一直線に登って行く。夏の道は左にある。頂上近くでいよいよ風が烈しくなる。温度は大したものでなく、摂氏の零下四度を示していた。まつ毛は凍って白い。徳本の頂上の道よりちょっと南に出た。東側には雪が二間もかぶっていた。下りは非常に滑りにくかった。古い雪の上に新しい雪が乗っているので、みななだれてしまう。途中吹雪の中で焚火をしたが少しも、暖かくなかった。手袋をちょっとぬぐともう凍ってかたくなる。岩魚留《いわなどめ》に近くなったら大変暖かくなった。岩魚留で昼をつかってすっかり休んだ。もうスキーは用いられない。午後三時に岩魚留を出発して清水屋に着いた。
[#地から1字上げ](大正九年四月)
底本:「山と雪の日記」中公文庫、中央公論社
1977(昭和52)年4月10日初版
1992(平成4)年12月15日6版
底本の親本:「山と雪の日記」梓書房
1930(昭和5)年3月
入力:林 幸雄
校正:田口彩子
2001年12月8日公開
2005年11月24日修正
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