のは御当人と戸田ぐらいなものだが、例のがんばりで塩をむやみと入れたのでしょっぱくてはなはだ迷惑だ。小池らは胸が悪いからお湯をくれといって甘酒を侮辱したので、坊城の頭が傾いたと思うと断然うまいとがんばった。瘠我慢で戸田と二人でとうとう呑みほした。恐ろしいがんばり方だ。戸田はローマ法皇のような平和論者だからおつきあいをしていたが、坊城は唯一の味方を得たつもりで東京に帰ったら家に甘酒をのみにこいと誘っていた。いまに甘酒に中毒してさかだちしても駄目だ。
十二月二十九日。朝は昨日のところで滑る。昼から新天地を見つけに右手に入って行った。雪にうずもれた炭焼き小屋から煙が静かに上っている。みんなここで滑っているうちに板倉は一つ山を越えて向こうへ行った。いい傾斜があったと思って滑って行くと三尺ばかりの段があったので、知らぬ間に空中に浮いたと思うと下に落ちた。杖を力に倒れずにすんだので、大変得意でそのまますべって行ったら木を股にはさんで倒れた。そのうちに後の面々もかぎつけて柄にないジャンプを試みる。雪をけずって、無理にも空中に飛び上るようにして滑ってくる。板倉は一間ばかり空中に飛び上ったと思うと、二間
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