ら毎日一度ずつ、銀座を歩くことにしたの。だから、ちょうどいいわ。私、銀座で会ったら、示威《デモ》をしてやりたい人があるの。」
「下らない。来てくれるのなら、一しょに出かけるから、サッサと洋服着てよ。」
「ハイ、ハイ。」と、美和子は立ち上りながら、
「私も、お姉さんのように、舞台へ出ようかな。」と云うと、圭子は、
「駄目! 貴女《あなた》のような精神的な陰翳のない人は駄目!」
「へえ。」と、唇をそらした美和子の表情の方が、姉よりは、ずーっと陰翳があった。
二
天性明るく淡泊な美和子ではあったが、しかし、意地っぱり屋であった。
美沢の心の中に、新子に対する清算しきれないものがあるのを知ると、何か苛々《いらいら》して来て、ひたむきに美沢を追う気になれず、その不満をまぎらすために、姉の酒場《バー》で働いていると、そこへ美沢が現れて、
(君とも会わないよ!)と、何か新子を清算するお添物のように、あっさり片づけられてしまうと、美和子は口惜《くや》しくて仕方がなかった。
何か、あっと云うようなことをやり出して、美沢や姉に思い知らしてやりたい気がしていた。
だから、圭子に精神的陰翳がないから駄目と、あっさり云われても、姉の世話係として、劇団へ出入《でいり》するうちに、自分も舞台へ出る機会を掴むつもりでいた。
圭子達の今度の公演の場所は、帝国ホテルの演芸場であった。だが稽古場としては、銀座裏の桜亭という貸席を借りていた。
美和子は、その朗かな性質で、たちまち劇団の人達と、お友達になってしまい、姉の手伝いばかりでなく、誰の用事でもしてやるので(美和ちゃん美和ちゃん)と皆から重宝がられていた。
今度の出し物は、日本の現代作家の創作戯曲であった。
第一夜は、満員に近い盛況であった。
第二日目の夜、楽屋入をして間もなく、圭子は面会のお客があって楽屋から出て行ったまま、しばらく帰って来なかった。
二十分も経った頃、座員の一人が美和子のところへ来て、
「お姉さんから、ホテルのグリルにいるから、君にもすぐ来い! という言伝《ことづて》だぜ。」と、云った。
「ご飯喰べているのかしら。」と、美和子が訊き返すと、
「そうだろう。君にも、ご馳走してくれるんだぜ。」
「素敵! 素敵!」美和子は、雀躍《こおど》りして演芸場からは近い、ホテルのグリルへ駈けつけりた。
や
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