ると、圭子は、たちまち、夫人に同情して、
「妹のことを、悪く云うのは、おかしいですけど、それがあの人の欠点なのですの。ちょっと、誇学的《ペダンチック》で、融通のきかないところが。まあそんなことで、奥様に楯ついたりなんかして、ほんとうに相すみませんわ。ほんとうにそんなことで……」
「いいえ。私も、そんなことに拘泥《こだわ》るのでなかったんですの。私さえ黙っていれば、何でもなかったのに、ついあんなことになって、ほんとうに、お気の毒なことになって……」と、夫人はいよいよ図に乗って、慈愛ぶかさの限りを見せた。
「ご存じでしょうかしら、私が、劇の公演のことで、どうしても、お金が入用になりましたので、新子に無心しましたところ、新子が前川さんにお願いして、お金を出して頂きましたので、やっと公演の始末が出来ましたの。」
「それは、まだ新子さんが軽井沢にいらしった時の、ことなんですの。」夫人は、肝心な点だけは、ちゃんと釘を打っておくのだった。
「はあ、左様でございます。そんなご恩になっていますのに、いきなり帰って参りましたので、家でもみんな、びっくりしてしまいましたの。ほんとうに、奥様のお心持が分ったら、新子もきっと、面目なく思うだろうと、思いますの。私が代ってお詫び致しますわ。」と、圭子は、もう一度頭を下げた。

        六

 新子が軽井沢にいた項から、もうそんな金を前川が与えていたなど、駭《おどろ》くに足る新事実であったので、綾子夫人は、急に緊張しながら、
「おや、そんなこともございましたの? 主人は、無口な方ですから、私に何にも申しません。だから、ちっとも存じませんでしたわ。ですから、お電話だけじゃ、よく呑み込めないんで、お呼びしましたのよ。私も、新劇はとても好きでございますの……」
「まあ、うれしい!」
「もと、新興座が分裂しない前に、後援者達で作った火曜会というのが、ございましたでしょう。私、あれに、はいっておりましたの。だから新興座の公演は、替り目ごとに、見に参ったものですわ。」
「まあ。左様でございますか。じゃ、ぜひ私達の劇団も、後援して下さいませんでしょうか。まだ、学生が多くて、未完成でございますけれど……」
「いいえ。その方が、かえって熱があって、いいですわ。貴女なんか、ご器量はよし、舞台にお立ちになったら、見事でしょう。」と、おだてると、
「いいえ。でも
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