よ。」
「いいじゃありませんか。遊び過ぎるくらいなら、貴女だってその方《かた》だって、お互に好きなんでしょう。」
「私は好き。でも、その方は私が好きかどうか疑問なのよ。その方ったら、新子姉さんを、とても好きだったの。今だって、きっと好きだと思うわ。」と、アケスケな話に、準之助は、思わず引かれるように、美和子と視線を合わせて、相手を見つめた。
「じゃアつまり、お姉さまと、愛人関係だったんですか。」と、緊張して訊いた。

        八

 新子に愛人があったかどうかは、前川にとって、かなり気にかかることだった。
「ええ、そうだったのよ。」と、美和子はアッサリ肯定してつづけた。
「でも、美沢さんって方《かた》、気が小さくて神経質でしょう、お姉様はデンと落着いている方《ほう》でしょう。だから、いつまで交際《つきあ》っていても、あまり発展しないのよ。ところが、この夏、お姉さまが軽井沢へ行ってしまったでしょう。その留守に淋しがりやの美沢さんは、少し自棄《やけ》で、私と遊んでしまった形があるのよ。……ところが、この頃、たちまちつまんなくなってしまったの。だって、結婚っていうことになると、美沢さん、とてもいらいらしてしまっているの。一しょにいても、ちっとも楽しくないの。だから、私お姉さまのところへ、毎日手伝いに行くのよ。」
「だって、貴女は好きなんでしょう、その人が。」前川は、新子にも関係のあることなので、もう一度改めて訊き直した。
「ええ、そりゃ……でも、私フラフラだから、自分でもとても困るわ。お姉さんのお店へ行っていると、何だかあんな仕事が、ほんとに自分の性に適《あ》っているような気がして、この頃、結婚なんかどうでもよくなってきちゃったのよ。」
 あんまり、物いいが率直で、かえって嘘か真実か、区別がつかないような美和子に、前川は思わず苦笑を浮べながら、胸の中は、前にいる美和子のことよりも、新子のことで一杯だった。
 新子に、つい最近まで愛人があったとして、それが今美和子と結婚しかかっているとしたら、前川はその結婚が滞りなく、早く纏《まと》まってほしかった。新子の周囲には、愛人らしいものの、翳影《かげ》も落ちていない方が、のぞましかった。こうして、新子の面倒を見ていて、いつかどうしようという野心は、神に誓ってないと前川は自分で思っている。また軽井沢で、自然の力と境遇の偶然性
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