。フランスにしばらくいた男で、カクテルには、自慢の腕を持っています。偏屈ですけれど、人間はごく正直な男ですから、洋酒の仕入れなど、一切|委《まか》せたらいいでしょう。貴女は、カウンターをやって、女給《ウェイトレス》は気持のいい少女を二人くらい傭ったらどうですか。」
「はア。」
「開業も、縁起のよい日がいいと思って、そんなことをよく知っている人に聞いたんですが、貴女は六白だから、今月は縁談金談はいいんです。十二日が大安でしたけれど、貴女の年には凶の日で、二十日の先勝がいいんですって……」
「まあ……そんなこと、お気になさいますの?」
「ははははあ。こういう水商売は、縁起をかついだ方が、いいのじゃありませんか。」準之助は、首をすくめて笑った。
「警察への届けなどは、こちらでやります。貴女は、明日でも新聞に広告して、貴女の気に入るような女給《ウェイトレス》を見つけて下さい。」
「はい。」新子は、長い言葉が出ないのであった。
「貴女、よくご覧になって足りないところがあったら、遠慮なく云って下さい。バーテンダーになる鈴木という男に万事頼んでおきましたから、大抵大丈夫でしょうけれど……表の看板のネオン・ライトは薄紫がよくはありませんか。」
「はア……」新子は、危うく涙になりかけるほど、有頂天な嬉しさに浸っていた。
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  義勇女給




        一

 もう、母や姉妹《きょうだい》に、少くとも母には、だまっているわけには行かなかった。
 しかし、故《わけ》もないのに、前川氏に立派な店を持たしてもらったといったら、母は理解できずに、不安に思うだろうし、わがままな姉は、またいい気になって、前川氏にどんなことを頼むか分らないと思ったから、ただ前川氏に頼まれて「店の監督」になったといっておけばいいと思った。
 綾子夫人も、とっくに帰京しているので、前川氏は妻の手前早く帰ってしまったので、新子も家へ帰ったのは、七時半頃だった。母一人のところで話せばいいものを、新しい生活に入る嬉しさは、おさえ切れず、つい美和子の居るところで、話してしまった。
「まあ、その酒場《バー》、前川さんが、おやりになるの?」と、美和子が訊いた。
「ええ、お道楽でおやりになるんですって。」
「素敵なんでしょうね。」
「ええ、とても気持のいい家よ。」
「新聞広告なんかしたって、なかなか美人なんて
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