がしたが、すぐ落着いて、
「すぐ行くわ、少し綺麗になって……」と、毛の落ちかかっている生際《はえぎわ》へ、手をやった。

        三

 年寄同士のくどい挨拶の、頃を見計らって顔を出そうと、茶の間で、座敷の話を聴いていると、案に違わず、美和子は美沢と、昨夜一夜を過したらしい。
 新子の母は、思いがけないことばかりで、(まあ?)とか(おや!)とか、いう感嘆詞ばかりで答えている。
(新子は、長い間お交際《つきあい》していたようですが、美和子までが、そんなお交際していようとは、驚きましたね)と、あっけに取られている。
 美沢の母の話によると、美和子は昨夜《ゆうべ》美沢と一しょに、鎌倉か逗子かへ遊びに行って、今朝二人で美沢の家へ帰って来たが、(家へ帰ると叱られるから、小母さまが行って、話をつけてくれ!)と傍若無人の駄々を、こねているらしかった。
「新子!」と、母がその時呼んだので、新子は境の襖をあけて、上半身をのぞかせた。新子とは幾度も会ったことのある美沢の母は、愛想よく蒲団から、身を退《すさ》らせて、挨拶した。
「しばらく……軽井沢の方へ、おいでになって、いらしったそうで、少しおやせになりましたようで……」
「はア。」新子は、やさしく笑った。
「昨夜は、ご心配をおかけして、相すみません。美和子さんが、宅の方にいらっしゃいますのですよ。」
「あの人、ほんとうにわがままで、ご迷惑をおかけしてすみません。」新子は、もう覚悟していたことなので、素直に答えることが出来た。
「いいえ。」美沢の母は、ちょっと新子の心持を探《さぐ》るように、ジッと視線を合せて、新子の澄んだ静かな瞳にぶっつかると、安心したように、
「何ですか。こう、藪《やぶ》から棒のようなお話ですけれど、……若いもの同士で、あやまち[#「あやまち」に傍点]のありません内に、いっそ美和子さんを、私の方へいただきたいと思うんでございますけれど……」
「美和子でございますか。」美沢の母の言葉が終らない内に、新子の母が、びっくりして訊き返した。
「はア。昨夜なんぞも……」美沢の母は、ちょっと思い計るように、そこで止してしまって、新子に、
「貴女とも、一度よくご相談したいと、思ってはおりましたんでございますけれど……」そう云われて、新子は顔を真赤にしたが、しかし、しっかりした調子で、母へ、
「お母さん、美和ちゃん、子供みた
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