た。
すると、新子の下りるのを待ちうけていたように、圭子が、
「前川さんから速達よ!」と、白い封筒を差出した。ちょっと、かつがれたのではないか、と思いながら、受け取った。が、まさしく裏に元園町のアドレスを刷り込んだ前川氏の手紙だった。
その白い封筒を、サリサリと裂いたとき、新子の気持は、決して平らかなものではなかった。
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いろいろ貴女に、お詫《わ》びしたいことばかりです。僕も昨夜遅く帰って来ました。一刻も早く貴女にお目にかかりたく、その上、お詫の言葉と僕の気持を聴いて頂きたいのです。今日午前中は自宅に、午後は会社におります。いずれかへ、ぜひお電話をねがいます。電話が、ご都合わるき時は、お手紙を。会社の電話番号は、銀座五六八一です。一刻も早くお目にかかりたいと思います。
[#ここで字下げ終わり]
文句は、短かったが、新子は相手の、青年のような熱情に打たれずにはいられなかった。
二
手紙を読み了《お》えた新子に、
「前川さんも、東京へ帰っていらっしゃるの?」たちまち、傍《かたわら》から姉が、余計な詮索をし始めた。
新子が、だまっていると、
「何て云ってよこしたの、貴女にすぐ帰ってくれと云うんでしょう……」だまっていると、もっと余計なことを云いそうなので、
「ほんとうは、私奥さまと喧嘩をしてしまったの。ご主人にご挨拶もしないで帰ってしまったので、心配していらっしゃるの。でも、どうにもなりやしない!」
「だって、折角手紙下さるんですもの、行って会っていらっしゃい。今度は、関係していらっしゃる会社の方にでも、使って下さるわよ。」
「いやよ。もう、前川さんのお世話なんかに二度とならないことよ。」
「そうお、それでも、ご主人だけには、挨拶して来るといいわ。私のためにだって、あんなにして下さったんですもの。」
「………」
新子がだまっていると、
「私も、お礼に顔出ししなければいけないわねえ。」と、とんでもないことを云い出したので、
「よしてよ。お姉さんが、余計な所へ顔を出すのは。」と、ハッキリ抗議した。
まるで、この半月ばかり、姉のために奉仕したような気がしていやだった。何から何まで、勝手なことをして(前川さんへお礼に行く)もないものだと思った。
新子は、姉との小うるさい問答を避けて、二階へ上った。そして、美和子を追い立
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