少し蒼白な顔をしていました。そして判決文も、いつものように朗々とは響きませんでした。
「被告|何某《なにがし》を禁錮一年に処す」という主文の宣告があった後、いくら待っても、執行猶予の言い渡しが続きませんでした。被告の顔にも、傍聴人の顔にも、深い失望の色が浮びました。
 が、若杉裁判長は、そんなことには一向頓着がないように、理由書の朗読が終ると、ドアを排してさっさと退席してしまいました。



底本:「菊池寛 短編と戯曲」文芸春秋社
   1988(昭和63)年3月25日第1刷発行
入力:真先芳秋
校正:久保あきら
1999年9月19日公開
2005年10月12日修正
青空文庫作成ファイル:
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