あのコオトじゃ、埃《ほこり》が立つだけですよ。人情から言っても謝りたいコオトだ。
未納 少し堅めるといいんだわ。
須貝 堅めてもいいが……。
未納 撮影所の裏に、ローラーがあるのよ。
須貝 僕なら御免を蒙《こうむ》るぜ。
未納 お手伝いしてよ、妾。
須貝 君が?
未納 妾、ずっと前だけど、バスケットの選手だったことがあるのよ。
須貝 しかし、ローラーはバスケット・ボールじゃないよ。
未納 母さんと亜鈴《あれい》体操したことあってよ、妾達、大人用の亜鈴。
須貝 兎に角しかし、亜鈴はローラーと違う。
未納 そう思わない? 妾が一緒に手伝ったら、少しは楽になると。
須貝 此処にこうして坐ってるほど楽じゃないと思うな。
未納 どうして、揶揄《からか》うの、そんなに。真面目に話さないの、どうしても。
須貝 いや、真面目だよ、未納ちゃん。
未納 お姉さんに言うときは、美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]さん、さんって言うわよ。
須貝 そうかな、気がつかなかった。
未納 嘘。嘘言ってるわ。わざっと、あなたは妾だけちゃんと言うの、兄さんにだって昌さんって言うじゃないの。
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