からの話だ。
未納 だって、勝とうと思ったら、誰だって……難しい球打つわよ。
須貝 僕があんなボールを打てないと思ったら間違いだぜ。わざっと打たないだけの話さ。
未納 (窓の傍で)御覧なさい。須貝さん。
須貝 何が見えます。
未納 そんなところで、何か言ってないでさァ。
須貝 言い給え。
未納 用心深いのね。
須貝 猫がいる! それとも犬か?
未納 お洗濯の連中よ、また引っ張られてくらしい。
須貝 珍らしくもない。
未納 珍らしいものなんて、言ってやしないわ。
須貝 一晩|睡《ねむ》ると、また、バケツを提げて集って来るよ、きっと。
未納 ああ言うのは、仕方がないのね。
須貝 連れてく方でも持てあましてるんだろう。
未納 直ぐ還して貰えるもんで、馴れっこになってるんだわ。
須貝 尤《もっと》も、有り余ってる水だから、洗濯もしてみたくなるか。どうだろう、あの川、泳げるかしら。
未納 泳ぐつもり? 須貝さん。
須貝 風致保存区域だって、泳ぐぶんには差支《さしつか》えないだろうな。
未納 連れてかれてよ。構わない。
須貝 風致を害するか。
未納 洗濯どころじゃない。
須貝 近代的な景色でいいと
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