……ただ……お母さんはまだ若い……。(去る)
[#ここから3字下げ]
三人、ぼんやりと大きな溜息をつく。
[#ここで字下げ終わり]
未納 さて……と。
[#ここから3字下げ]
扉を乱暴に閉《しめ》る音。
[#ここで字下げ終わり]
未納 同情するわ、妾……。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] どう言うことになるのかしら。
昌允 どう言うことになるかなあ。とにかく、いろんなことが起ったからね……。
未納 でも、ほんとは、なんにも出来事なんて起きてやしないのよ。
昌允 そうさ。出来事と言うのが、急行列車の顛覆《てんぷく》のようなものだけを言うとすればだ。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] あの人、逐《お》い出されるのかしら。
昌允 みんなが冷静になる迄待つさ。心が落ちついてみれば、いろんなことが分って来るだろう。どちらにしても、須貝さんは、あなたと結婚したがっている。それは、確かな話だし……あなたにしたって……。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] あの人が妾と結婚したいと言うのは、わからないわ。あの人は、妾なんか全然好きじゃないんだわ。若し好きだとしたって、他の女の人と同じほどにだけだわ。なにも特に、妾と……。
昌允 そんなことは、あなたにはわからない。わからなくってもいいことだ。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] あの方、自分でそう被仰ったのよ。勿論はっきりそう言ったわけじゃないわ。だけど妾、自分が莫迦だとは思わないわ。何でも……ないのに……疑って見られちゃ、つまらないから、お互に気をつけようって……そう言うことを被仰ったわ、御自分で……。それから二時間にもなりゃしない今……。
未納 それで、お姉さん、お部屋で泣いてたのね。それじゃ、妾と一緒だわ。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] そうよ、だけど、もうそれで、妾、はっきりしたわ。もう、そんなこと、考えないことにしたの。
昌允 それは……取りようによっては……どうにでも取れることだ。だが……そう言うことで簡単に……そう……言うことを……。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] お兄さんは……妾が、始めに須貝さんを好きになったことが許せないのね。
昌允 いや、そうじゃない。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−1
前へ
次へ
全51ページ中42ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
森本 薫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング