たのよ。妾の方じゃ兄妹だと思っていたから平気でいられたのね。恥ずかしいわ。我儘ばかり言ってたわ。
諏訪 そんなことないわ。母さんが保証してよ。
鉄風 ほんとに問題はないかね。これは……。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] 未納ちゃんからそう言われてみると、お兄さんが妾によくして下すったことが、一つ一つ胸に思い当って来たわ、ほんとに妾いけなかったと思うの。
未納 それはそうだわ。お兄さんは不器《ぶき》っちょだけど、あれで、いろいろ気をつかってはいるんだわ。だあれも、それを感じて上げないんだもの。
鉄風 生意気を言うな。すると、この問題は昌允から出てるんだな、そいつは一向気がつかなかった。
諏訪 妾、言ったでしょ、何かあるに違いないって。
鉄風 しかし君は、事態がこうだとは言わなかったよ。
諏訪 そんなこと、誰にだってわかりゃしないわ。
鉄風 何か、か。それだけじゃ、分っていたとは言えんよ。
未納 そいじゃァ、お姉さん本当なの、それ。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] ええ、妾ね、以前は少し怖かったのよ。だけど、もう怖くなくなったわ。あの人はいろんないいところがあるのよ。そりゃァ……。
未納 (機嫌が直っている)現金だわ、お姉さん現金よ。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] ええ、そう。妾、自分でもそう思ってるの……(両手で頬を押える)可笑しいわね。
未納 まあまあだ。お父さん、どう。構わないでしょ。
鉄風 何とも言えん。母さんと相談してくれ。
諏訪 妾にはわからないわ。あなたが始めに口を切ったことよ。あなたがいいように、して上げて下さい。
鉄風 何も俺一人に委《まか》せることはないさ。君の考えも聴こうじゃないか。
諏訪 考えなんかありません。いろんなことが、一度に起っちゃったものだから、妾、頭ん中が滅茶々々よ。明日が心配だわ。あなたがやって下さい。
鉄風 俺にだって一向名案も浮ばない。兄と妹とが愛し合うということは、世間の手前、どう言うことになるのかね。
昌允 (川原から)未納そこに居ないか?
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間。
[#ここで字下げ終わり]
昌允 (外で)美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]さん!
[#ここから3字下げ]
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]、立ち上って窓の所へ行く
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