んべん+予」、第3水準1−14−11] 厭だわ、妾。
昌允 ひどく怖いな。須貝さん、そんなに感じやしないでしょう。
須貝 しかし、これは……。
昌允 落第ですか。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] 直ぐ出て来てよ。(須貝に)御免なさい。
昌允 うん。
[#以下3字下げ]
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]、去る。
[#ここで字下げ終わり]
昌允 僕は算盤《そろばん》をはじく方が性に合うんです。物を創るなんて言う柄じゃないですね。
須貝 (面喰って)え、ああ、しかし……。そうですか。
昌允 何です。
須貝 いや。
[#ここから3字下げ]
間。
[#ここで字下げ終わり]
昌允 未納の奴一体………
須貝 考えてみるとこの…
}(同時に)[#「}(同時に)」は前2行の中央、下に]
[#ここから3字下げ]
間。
[#ここで字下げ終わり]
須貝 未納君って言う人もあれで……
昌允 芸術なんて奴はどうしても……
}(同時に)[#「}(同時に)」は前2行の中央、下に]
[#ここから3字下げ]
間。
[#ここで字下げ終わり]
須貝 さあ、何です。
昌允 どうぞ……あなたから……。
須貝 そうですか。つまり僕はこう言うことを考えてるんだが……ええっと……僕は何の話をしようとしてたのかな……。
昌允 忘れたんですか? そういうことは……ありますね。妙な話ですが、あなたは、未納と美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]と、どっちがいいと思います。
須貝 ……いいって言うのは、何《ど》う言うことです。
昌允 さあ、そう念を押されても困るんだが、まあ綺麗《きれい》でもいいですよ。何方《どちら》が綺麗だと思います。
須貝 こりゃ難しい話だな。
昌允 そんなことはありませんよ。
須貝 どちらも、同じくらい綺麗、じゃいけないですか。
昌允 いけませんよ、それじゃ、返答にならない。
須貝 待って下さい。(考える)何うも……。
昌允 答えて下さい。あなたが貰うんだったら、どちらを取ります。
須貝 お菓子だな、まるで。
昌允 お菓子だと思って下さい。
須貝 僕は、考えてみたことがないんですよ、そう言うことは。
昌允 考えてみておいた方がいいですよ。今に考えなくちゃァ、ならなくなりますよ。
須貝 しかし僕は今それどころじゃないんですからね。新しい仕事のプランだけで
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