姉のお北は一緒にいないのか」
「おあねえさんは御一緒じゃありません」
「姉の居どころをおまえは知らないか」
お冬は又だまってしまった。あくまでも焦らされているように思われて、年の若い長三郎は苛々《いらいら》した。
「これ、正直に教えてくれ。頼む」
「お頼みですか」
「頼む、頼む」と、長三郎は口早に云った。
「わたくしもお頼み申したいことがありますが……」と、お冬は自分の顔を男の頬へ摺り付けるようにして、訴えるようにささやいた。
もうこうなっては前後を省《かえり》みる暇もないので、長三郎は素直に答えた。
「おまえの頼むこと……。なんでも肯《き》いてやる。早く教えてくれ」
「では、一緒においでなさい」と、お冬は立ち上がった。
彼女はやはり男の手を掴んで放さなかった。
この上は彼女の心のままに引き摺られて行くのほかは無いので、長三郎も無言で歩み出した時、宵からの生《なま》あたたかい風が往来の砂をまいてどっと吹き付けた。その砂を顔に浴びて、男も女もあわてて両袖を掩《おお》ったので、繋がっている手と手が自然に離れた。長三郎の持っている提灯の火もあやうく吹き消されそうになった。
その風の
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