うに見送っていた。往来なかで人を呼びとめて、単にそれだけのことを訊《き》いて行くのは少しくおかしいと思ったからであろう。しかも吉五郎に取っては、吉田の家と佐藤の屋敷との関係を聞き出しただけでも、一つの手がかりであった。佐藤の屋敷の前で吉田の伜のすがたを見たなどと云うのは、もとより当座の出たらめに過ぎないのである。
 吉田と佐藤とが親戚の間柄である以上、吉田の次男幸之助がその屋敷へ出入りするに不思議はない。そうして、その屋敷にいるお近という女と親しくなったと云うのも、世にありそうなことである。唯その幸之助が留吉の虜《とりこ》とならずに、どこへ姿を隠したか、それを詮議しなければならないと吉五郎は思った。
 彼はそれから京橋へ足を向けて、白魚河岸の吉田の家をたずねた。勿論、玄関から正面に案内を求めるわけには行かないので、彼は気長にそこらを徘徊して、その家から出て来る中間や女中らを待ち受けて、いろいろにかま[#「かま」に傍点]を掛けて探索したが、幸之助は実家にひそんでいないらしかった。
「燈台|下暗《もとくら》しで、やっぱり佐藤の屋敷に忍んでいるかも知れねえ」
 吉五郎はいったん神田の家へ帰っ
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