げた若い衆よりも、身を投げさせた相手に眼をつけると、それは四十前後の人柄のいい侍で、これも身投げの仔細をおおかたは察したらしく、微笑を含みながら見返りもせずに行き過ぎた。
 吉五郎は引っ返して、その侍のあとを追った。橋を渡り越えて室町《むろまち》のあたりまで来た時に、彼は小声で呼びかけた。
「もし、もし、今井の旦那……」
 呼ばれて立ち停まった侍の前に、吉五郎は小腰をかがめて丁寧に会釈《えしゃく》した。
「旦那さま。御無沙汰をいたして居ります」
「三河町の吉五郎か」と、侍は又微笑した。「今のを見たか。おれ達はどうも憎まれ役で困るよ」
 侍は鯛の御納屋に勤めている今井理右衛門であった。自分が何をしたという訳でもないが、自分のために若い衆が身を投げたのを、岡っ引の吉五郎に見付けられたかと思うと、彼はやや当惑に感じたのであろう、憎まれ役などと云い訳がましく云っているのを、吉五郎は軽く受け流してすぐに本題に入った。
「途中でこんなことをお尋《たず》ね申すのも失礼でございますが、あなたは吉田の旦那と御懇意でございましたね」
「吉田……。白魚河岸か」
「左様でございます。それで少々伺いたいのでござ
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