来ると、母のお由は午飯《ひるめし》を食いながら話した。
「おとなりの幸之助さんはゆうべから帰らないそうだね」
「どうしたのでしょう」と、長三郎はそらとぼけて訊《き》いた。
「お友達と一緒に遊びにでも行ったのかも知れない」と、お由は笑いながら云った。「こっちへ来てはまだ昨今だけれど、京橋の方にはお友達が随分あるようだからね。なにしろ御納屋《おなや》の人たちには道楽者が多いと云うから」
「お婿《むこ》に来て、まだ一と月にもならないのに、夜遊びなんぞしては悪いでしょう」
「悪いとも……」と、お由はうなずいた。「けれども、お婿と云っても相手のお勝さんがあの通りだからね。きっとお友達にでも誘われて、どこへか行ったのだろうよ」
 姉のお北も、妹のお年も、そばで一緒に箸をとっているので、長三郎はこの対話のあいだに姉の顔をぬすみ視ると、気のせいか、お北の顔色はやや蒼白く見られた。
 その日の夕方に、お北もゆくえ不明になった。

     七

「きょうはお天気で好うござんしたね」と、二十四、五の小粋《こいき》な女房が云った。
「むむ。初午《はつうま》も二の午も大あたりだ。おれも朝湯の帰りに覗いて来たが
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