人は一体どうなることだろう。いずれにしても一と騒動はまぬがれまい。
 それを考えながら、長三郎は暫く遠目に眺めていると、お冬は訴えるように又ささやいた。
「あのおふたりは、このごろ時々に……」
「きょうばかりでは無いのか」と、長三郎はいよいよ不安らしく訊《き》いた。
 お冬はうなずいた。ゆうぐれの寒さが身にしみたように、長三郎はぞっ[#「ぞっ」に傍点]とした。自分は中間と町人のあとを尾《つ》けて来たのであるが、長三郎はもうそんな事は忘れてしまったように猶も横町をながめていると、その思案の顔に鬢《びん》のおくれ毛のほつれかかって、ゆう風に軽くそよいでいるのを、お冬は心ありげに見つめていた。
 目白の不動堂で暮れ六ツの鐘を撞《つ》き出したので、それに驚かされたように、幸之助とお北の影は離れた。男を残してお北ひとりは足早に引っ返して来るらしいので、姉に見付けられるのを恐れるように、長三郎もおなじく足早にここを立ち去った。

     六

「考えると、不審のことが無いでもない」
 長三郎は家《うち》へかえってから又かんがえた。黒沼の娘お勝はまだ全快しないで、その後も引きつづいて枕に就《つ》い
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