す。おかげさまで、どうにかとどこおりなく片付きました」と、幸之助はふたたび挨拶をした。
「そこで、御新造は……」
「まだ臥《ふ》せって居ります」
 お勝は病中であるにも拘らず、父の急変におどろかされて、母と共に現場へ駈け着けたばかりか、その翌日も無理に起きていたので、病気はいよいよ重くなった。彼女は母のお富と、新らしい婿の幸之助とに看病されて、その後も床に就いているのである。彼女は父の葬式に列《つら》なることも出来なかった。葬式やら、病人やら、黒沼家の混雑は思いやられて、長八はますます同情に堪えなかった。
「就きましては、明日は初七日《しょなのか》の逮夜《たいや》に相当いたしますので、心ばかりの仏事を営みたいと存じます。御迷惑でもございましょうが、御夫婦と御子息に御列席を願いたいのでございますが……」
「いや、それは御丁寧に恐れ入ります。一同かならず御焼香《ごしょうこう》に罷《まか》り出でます」と、長八は答えた。
 これで正式の挨拶も終ったところへ、娘のお北が茶を運んで来た。まだ馴染《なじみ》の浅い仲とはいいながら、客と主人はやや打ち解けて話し出した。
「御承知でございますか。護国寺前
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