ると、源蔵もつづいて出て来た。
「まったくあの娘も可哀そうですよ」
「そうだな」と、長三郎も同情するように云った。
「なにかまだほかに御用は……」と、源蔵は訊いた。
「いや、わたしももう帰る。忙がしいところを気の毒だったな」
「いえ、なに……。わたくし共の店も此の頃は閑《ひま》ですから、毎日ぶらぶら遊んでいます。忙がしいのは暮の内で、正月になると仕事はありません」
「そうだろうな」
 云いかけて、ふと見かえると、露路の入口にはお冬が立っていた。
 彼女は濡れた前垂れの端《はし》を口にくわえながら、その片眼に何かの意味を含んでいるように、こちらをじっと窺っているらしかった。源蔵も気がついて見返ったが、別になんにも云わなかった。二人が道のまん中で別れるのを、お冬は暫く見送っていたが、やがて足早に引っ返して露路へはいった。
 長三郎は家《うち》へ帰って、ありのままに報告すると、父の長八は唯だまってうなずいていた。この上は藤助が果たして何者かに殺されたのか、あるいは無事に何処からか現われて来るか、自然にその消息の知れるのを待つほかは無かった。長八は伜に注意して、今後も油断なく藤助の安否を探れと
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