た。
「さては今井|氏《うじ》、貴公がこの長三郎を案内して来たのだな」
「いや、違う、長三郎は勝手に来たのだ」
「いや、そうでない。貴公らが申し合わせて、この幸之助を罠《わな》に掛けようとするのだ。その手は喰わないぞ」
 幸之助はもう亢奮《こうふん》して、誰彼れの見さかいも無くなったらしい。誰を相手ということも無しに、腰の刀をすらりと抜き放した。
「これ何をするのだ」と、理右衛門は制した。「取り逆上《のぼ》せてはいけない。まあ、鎮まれ、鎮まれ。どうも困った気ちがいだ」
「むむ、気ちがいだ」と、幸之助はいよいよ哮《たけ》った。「こうなれば誰でも相手だ、さあ、来い」
 理右衛門を相手にするには、少しく距離が遠いので、彼はまず手近かの長三郎を相手にするつもりであったらしい。突然向き直って長三郎に斬ってかかった。長三郎はこころえて身をかわしたが、それと同時に、きゃっ[#「きゃっ」に傍点]という女の悲鳴がきこえた。
 二挺の早駕籠が宙を飛ばせて来て、ここの門口《かどぐち》に停まった。
 お冬は長三郎の身代りに斬られたのである。彼女は男のあとを追って来て、門口に様子を窺っていたのであるが、幸之助と
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