半七捕物帳
白蝶怪
岡本綺堂
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)申《さる》年
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)関口駒井|町《ちょう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「日+向」、第3水準1−85−25]
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一
文化九年――申《さる》年の正月十八日の夜である。その夜も四ツ半(午後十一時)を過ぎた頃に、ふたりの娘が江戸小石川の目白不動堂を右に見て、目白坂から関口駒井|町《ちょう》の方角へ足早にさしかかった。
駒井町をゆき抜ければ、音羽《おとわ》の大通りへ出る。その七丁目と八丁目の裏手には江戸城の御賄《おまかない》組の組屋敷がある。かれらは身分こそ低いが、みな相当に内福であったらしい。今ここへ来かかった二人の娘は、その賄組の瓜生《うりゅう》長八の娘お北と、黒沼伝兵衛の娘お勝で、いずれも明けて十八の同い年である。
今夜は関口台町の鈴木という屋敷に歌留多《かるた》の会があったので、二人は宵からそこへ招かれて行っ
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