一に突き留めなけりゃあならねえのは、その死骸の始末だが、寺で殺して置きながら墓場へ埋めてしまわねえのは、後日《ごにち》の証拠になるのを恐れたのだろう。川へ流したか、それとも人の知らねえような所へ埋めてしまったか。源蔵の話じゃあ、二人の男が橋の方へ行ったらしいと云うから、ひょっとすると何かの重しでも付けて、江戸川の深いところへ沈めたかも知れねえ。日が経って浮き上がったにしても、死骸がもう腐ってしまえば人相は判らねえからな」
「そうですね。殺した奴は誰でしょう」
「おればかり責めるなよ。おめえもちっと考えろ」と、吉五郎はまた笑った。「殺されそうな女も三人あるが、殺しそうな男も三人ある。火の番の藤助と、黒沼の婿の幸之助と……。もう一人は寺の住職……。まず三人のうちらしいな。いや、往来でいつまでも立ち話をしているのは良くねえ。そこらで午飯でも食いながら相談するとしよう。留はあの様子じゃあ、まだ当分は思うように働かれめえ。おめえが名代《みょうだい》にひと肌ぬいでくれ。頼むぜ」
「ようがす」
二人は連れ立って、そこらの小料理屋へあがると、時刻はもう午《ひる》を過ぎているので、狭い二階には相客もなかった。縁側に寝ころんでいた猫は人の影をみて早々に逃げて行った。
「あんまり居ごころのいい家《うち》じゃあねえな」と、兼松はつぶやいた。
「まあ仕方がねえ。こういう時には、繁昌しねえ家の方が都合がいいのだ」
親分も子分も少しは飲むので、取りあえず酒と肴をあつらえて猪口《ちょこ》を取りかわした。
「今度の一件は留の受け持ちで、わっしは中途からの飛び入りだから、詳しいことが腹にはいっていねえんですが……」と、兼松は猪口を下に置いて云い出した。「いったい、佐藤の屋敷に忍んでいるお近という女は何者ですね」
「今はお近といっているそうだが、以前はお亀といって、深川の羽織をしていたんだ」
「むむ。芸者あがりかえ」
「容貌《きりょう》も好し、気前もいいとか云うので、まず相当に売れているうちに、金田という千石取りの旗本の隠居に贔屓《ひいき》にされて、とうとう受け出されて柳島の下《しも》屋敷へ乗り込むことになったのだ」と、吉五郎も猪口を置いて説明した。「それでまあ二年ほど無事に暮らしていたのだが、今から足かけ四年前の秋のことだ。十三夜の月見で、夜の更《ふ》けるまで隠居と仲よく飲んでいた。……それまでは
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