、彼はお霜から幾らかの路用を貰って大磯へ逃げた。
これだけの事を知っていながら、お霜は弟が可愛さに、今まで秘密を守っていたのであった。
「先日のお調べにいろいろ嘘を申し上げまして、まことに申し訳がございません」と、お霜は再び頭を下げた。
「そこで、そのお磯という娘は次郎兵衛と訳があったのか」と、半七は訊いた。
「それは弟もはっきり申しませんでしたが……」と、彼女は答えた。「お磯はお葉という女に連れられて江戸へ出て来ますと、次郎兵衛は姿を隠してしまって、女髪結の二階にはいないので、お葉はおどろいて真っ先きにわたしの家へたずねて参りましたが、先日も申し上げました通り、どこまでも知らないと云い切って帰しました。その晩にお磯が又、お葉の家をぬけ出して尋ねて来まして、自分は今度吉原へ勤めをすることになった。その訳は次郎さんもよく承知しているが、吉原へ行ってしまえば又逢うことは出来ないから、もう一度逢わせてくれと申します。これもはっきりとは云いませんでしたが、どうも弟と訳があるらしいので、わたくしも可哀そうだと思いましたが、弟のゆく先を話して聞かせるわけには参りません。話したところで、大磯まで逢
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