に訊いても口を結んでいるかも知れねえから、その友達を詮議してみろ。近所に呉服屋や小間物屋の遊び仲間があると云うから、それを訊いて廻ったら大抵は判るだろう。その連中が取巻きに連れ歩いている太鼓持や落語家のうちに、素姓の変っている奴があるか無いか、それを洗ってくれ。お葉に掛け合いを付けるのは、それから後のことだ」
「ようがす。受け合いました」
 庄太は二人に別れて立ち去った。
「じゃあ、これで引き揚げですかえ」と、亀吉は少し詰まらなそうに云った。「これじゃあ浅草まで酒を飲みに来たようなものだ」
「その酒も飲み足りねえだろうが、まあ我慢しろ。これでお城の一件もどうにか当たりが付きそうに思うのだが……」
「そうですかねえ」
「まだ判らねえか」
「判りませんねえ」
「じゃあ、まあ、ぶらぶら歩きながら話そうか」
 ふたりは吾妻橋の袂から、往来の少ない大川端へ出て、傘をならべて歩いた。
「実は今、あの番頭の話を聴いているうちに、おれはふいと胸に泛かんだことがある。おめえ達が聴いたら、あんまり夢のような当て推量だと思うかも知れねえが、その当て推量が見事にぽんと当たる例がたびたびあるから面白い」
「そこ
前へ 次へ
全48ページ中32ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング