らんにお葉に当たってみた方が無事かと思いますが……」
「そこで、よもやとは思うが、若旦那とお葉とはまったく色恋のいきさつは無いのですね。相手は亭主持ちだから、そこをよく決めて置かないと、事が面倒ですからね」と、半七は宗助に訊いた。
「さあ、わたくしには確かなことは判りませんが……」と、宗助は考えながら答えた。「唯今も申す通り、本人は決してそんな覚えはないと申しております」
女中が酒肴を運び出して来たので、話はひと先ず途切れた。式《かた》のごとくに猪口《ちょこ》の遣り取りをしているうちに、雨はますます強くなった。
「お店《たな》の若旦那の遊び友達はどんな人達です」と、半七は猪口をおいて訊いた。
「そうでございます……米屋の息子さん、呉服屋の息子さん、小間物屋の息子さん、ほかに三、四人、どの人もここらでは旧い暖簾《のれん》の家の息子株で、あんまり人柄の悪いのはございません」と、宗助は指を折りながら答えた。
「お葉はおまえさんの店ばかりで、ほかのお友達の家へは行きませんか」
「さあ、どうでございましょうか」
「若旦那はどんな遊び方をします」
「それはよく存じませんが、なんでも太鼓持や落語家
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