追って来たのであった。
「親分。ひと騒動始まりましたよ」
「どうした。なにが始まった」
「白雲堂が死にました」
「どうして死んだ」
「河豚を食って」
「河豚……」
半七と弥助は顔をみあわせた。魚八の店に干してあった河豚の皮が二人の眼さきに浮かんだ。
五
太鼓に張るのは河豚の皮だけで、その肉はどうするか判らなかったが、むなしく捨ててしまうばかりでもあるまい、命がけで食う者に廉《やす》く売るのかも知れない。玉太郎の一件に係り合いのある白雲堂が河豚で死んだとあれば、その河豚は魚八の店から出たのではあるまいか。廉く買ったか、貰ったか、その河豚に祟られて彼は身を滅ぼしたのではあるまいか。
そうなると、白雲堂と魚八とは何かの関係が無ければならない。正直そうに見えた魚八の女房も当てにはならないで、やはりこの一件に係り合いがあるのか。そんなことを考えながら、半七は二人と共に浅草へ急いだ。
馬道の白雲堂の店は、けさに限っていつまでも戸を明けないので、両隣りの者が不審をいだいて表の戸を叩いたが、内にはなんの返事もないので、いよいよ不審が重なって、裏口の雨戸をこじ明けてはいると、売卜者《はっけみ》の白雲堂幸斎は台所に倒れて死んでいた。彼は水を飲もうとして台所まで這い出して、そこで息が絶えてしまったらしく、その肌の色は赤味を帯びた紫にかわっている。それが明らかに変死の姿であると判って、近所の人々はおどろいた。家主《いえぬし》や町《ちょう》役人も立ち会いの上で型のごとくに訴え出た。
やがて検視の役人も出張ったが、医者の診断や家内の状況によって、幸斎の死は河豚の中毒と判った。河豚で死ぬのは珍らしくない。それが他殺でない以上、検視は至極簡単に片付いた。半七らが行き着いた頃には、役人らはもう引き揚げて、白雲堂には近所の人達がごたごたしているばかりであった。幸斎はひとり者であるから、近所の者が寄り合って葬式《とむらい》を営むのほかは無かった。
半七は家主に逢って、売卜者のふだんの行状などに就いて問い合わせたが、庄太からきのう聞いた通りで、別に怪しいような節《ふし》もなかった。隣りの古道具屋の亭主の話によると、幸斎はきのうの午《ひる》過ぎから店をしめて出たとの事であった。
「そうして、いつごろ帰って来た」と、半七は訊いた。「どこへ行ったとも云わなかったか」
「出るときには、ち
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