を心中に出してやったんだろうと思われます。船の一件が露顕すれば、清吉もお信もどうで無い命、殊にお信はしっかり者だけに執念深い。それに魅《み》こまれた若殿さまはお気の毒のようですが、この人は女に惚れられるような美男に生まれ付いただけに、体も弱く、気も弱い質《たち》で、年もまだ十七、無事に家督を相続したものの、親や妹には不意に死に別れ、お信はゆくえ知れず、唯ぼんやりとしているところへ、死んだと思ったお信が突然にあらわれて来て、それにいろいろ口説かれたので、ついふらふらと死ぬ気になったんでしょう。今更のことじゃあないが、女に惚れられると恐ろしい。若殿さまがお信という女に惚れられた為に、これほどの大事件が出来《しゅったい》して、三千石の家は見ごとに潰れてしまいました」
「お嬢さまの死骸はとうとう揚がらなかったんですか」と、わたしは最後に訊《き》いた。
「いや、そのお春というお嬢さまは……」と、老人は悼《いた》ましそうに顔をしかめた。「何処をどう流れて行ったのか知れませんが、房州の沖で見付かりました。これは後に聞いたことですが、房州の漁師が沖へ出て、大きな鮫を生け捕って来て、その腹を裂いてみると
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