「考えてみると、おれも悪かった。このあいだ小梅の長五郎の話を聴いた時に、すぐに旦那に知らせて置けばよかった。そうしたら、旦那の方から浅井の屋敷へ内通して、若主人の出入りを厳重に見張らせたかも知れねえ。お屋敷のお名前にもかかわる事だから、決して他言してくれるなと長五郎に泣いて頼まれたので、おれもなんだか可哀そうになって、今まで口を結んでいたのが却っていけなかったようだ。この商売は涙もろくちゃあいけねえな」
「近頃こんなドジを組んだことはありません。そこで、親分。これからどうします」
「まだこれで幕にゃあならねえ。お信が生きていた以上は、千太もどこから這い出して来るか判らねえ」
「それじゃあ、やっぱり深川を見張っていますか」
「まあ、そうだ。寅吉の家《うち》の近所を見張っているほかはあるめえ」
寅吉は独り者であるから、家族について調べるという術《すべ》もない。近所の者が集まって投げ込み同様の葬式を済ませたので、その家は空店《あきだな》になったままである。それを知らずに、千太が忍んで来ることが無いとも云えない。それを目あてに張り込んでいるのである。
「おめえと庄太は気長に深川の番をしていて
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