家人と、小按摩の周悦と……。まだほかにも仲間がありましたか」
と、わたしは又|訊《き》いた。
「下駄屋は藤助という奴で、これは用人に化けていました。主人になったのは糠目《ぬかめ》三五郎という御家人、草履取りは渡り中間の権平という奴で、これだけは本物です。そのほかに馬淵金八という浪人が加わっていました。周悦はあとにも先にもたった一度、その一つ目小僧を勤めただけですが、当人はひどく面白がって、又なにかの役に使ってくれと、しきりに下駄屋をせびっていたそうです。なにしろ、一つ目小僧をさがしあてたので、それから口があいて、ほかの奴らも片っ端からみんな御用になってしまいました。つまらない怪談をやらなければ、もうちっと寿命があったかも知れないんですが、そいつらに取っては不仕合わせ、世間に取っては仕合わせでした」



底本:「時代推理小説 半七捕物帳(三)」光文社文庫、光文社
   1986(昭和61)年5月20日初版1刷発行
   1997(平成9)年5月15日11刷発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:網迫
校正:藤田禎宏
2000年9月5日公開
2004年3月1日修正
青空文庫作成ファイル:
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