の関係者はともかくも、千吉だけは免《ゆる》して置かれないと思ったが、かれを表向きに突き出せば関係者一同もその係り合いを逃がれられないので、半七は我慢して彼をも見逃がすことにした。それが動機となって甲州屋にはお紋という嫁が出来た。
自分の弟子が救われたので師匠の山村小左衛門は半七のところへわざわざ挨拶に来た。かれは感謝の意を表するために、報恩額の三字を大きく書いた。甲州屋ではそれを立派な額に仕立てて半七に贈ったのであった。
「半七先生のいわれはこうですよ」
老人は再び大きい声で笑った。わたしも釣り込まれて笑い出した。
底本:「時代推理小説 半七捕物帳(三)」光文社文庫、光文社
1986(昭和61)年5月20日初版1刷発行
1997(平成9)年5月15日11刷発行
※旺文社文庫版を元に入力し、光文社文庫版に合わせて校正した。この過程で確認した、両者の相違を示す。
・たなばたに供えるらしい素麺[#旺文社文庫版「たなばたに供えるらしい麦麺」]
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:網迫
校正:藤田禎宏
200
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