ものはお定一人しかないというのが手がかりで、だんだんその身分を洗いあげているうちに、前にお話し申したような順序で、とうとう本人を引き挙げてしまったんです。伊勢屋の仏壇にしまって置いた張子の虎は、やはりお定が盗み出したもので、ほとぼりのさめた頃にそっと松蔵の墓に埋めて来る積りであったそうです。いよいよ処刑になる時に、当人が最後の願いを聞きとどけられて、お定は紙でこしらえた数珠《じゅず》のはしに其の小さい虎をぶら下げて、自分の首にかけながら引き廻しの馬に乗せられました」



底本:「時代推理小説 半七捕物帳(三)」光文社文庫、光文社
   1986(昭和61)年5月20日初版1刷発行
   1997(平成9)年5月15日11刷発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:網迫
校正:おのしげひこ
2000年10月19日公開
2004年3月1日修正
青空文庫作成ファイル:
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