嗅ぎ付けられたらしいのが、彼等におびただしい不安をあたえた。常吉は文字春から委《くわ》しい話を聴いて、半七と相談の上で先ずその幽霊の身許詮議に取りかかった時に、半七がふと思い付いたのは彼《か》のお兼のことであった。お兼はいつまでも初心《うぶ》らしく見えるのを種として、これまでに小娘に化けて万引や騙りを働いた兇状がある。もしや彼女ではあるまいか眼串を刺して、子分の者に云い付けてひそかに彼女が此の頃の様子を探らせると、お兼は先頃浅草の小料理屋へ行って池田屋十右衛門に逢ったことが判った。池田屋は津の国屋の親類である。もう一つには、かの熊吉が大桝屋へ忍んで行って、ときどきに博奕の資本《もとで》を借り出して来るらしいことが、彼の仲間の口から洩れた。大桝屋も津の国屋の親類である。それから疑いはいよいよ深くなって、半七は遠慮なしに熊吉を引き揚げてしまった。しかし彼もなかなかの強情者で、容易にその秘密を白状しなかった。
 たとい白状しても、白状しないでも、徒党の一人が引き揚げられたと聞いて、かれらは俄かにうろたえ始めた。源助はあわてて何処へか姿をかくした。それが津の国屋の方へもきこえたので、お角も長太
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