あるに相違ねえ。ここの家に土蔵は幾つある」
「五戸前《いつとまえ》ある筈です」
半七は門の内へはいって、すぐに主人の当兵衛を呼び出した。
「御用がある。土蔵の戸前をみんな明けて見せろ」
当兵衛はおどおどしながら何か弁解しようとするのを、半七は追い立てるようにして、奥の土蔵前へ案内させた。御用の声におしすくめられて、当兵衛は五つの土蔵の扉を一々にあけた。
「大きい土蔵だ。一々調べてもいられめえ。もし、おまえさん。願いますよ」
半七に眼配せをされ、鳥さしの老人はすすみ出た。かの籠の中から二、三羽の雀をつかみ出して、扉の間からばらばら投げ込むと、第一第二の土蔵には何のこともなく、第三の土蔵も静まり返っていた。半七は注意して、第四と第五の土蔵の扉を半分閉めさせた。
老人の手から投げられた三羽の雀が第四の土蔵へ飛び込むと、やがてその奥であらい羽搏《はばた》きの音がきこえた。半七は老人と眼を見あわせて、すぐに扉のあいだから駈け込むと、うす暗い隅には鷹の眼が鋭くひかっていた。鷹はしきりに羽搏きして、そこらを飛びまわっている小雀を掻い掴もうと睨んでいるのであった。しかもその脚の緒が厳重に縛られ
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