もばれ[#「ばれ」に傍点]てしまいました。お此はそれについて勿論吟味をうけることになりましたが、小僧の一件はすべてわたくしの鑑定通りで、下手人には取られずにまず事済みになりましたが、もうこうなったらいよいよ縁遠くなって、婿も嫁もあったもんじゃありません。山城屋でもあきらめて、番頭の利兵衛に因果をふくめて、無理に婿になって貰うことにしました。利兵衛もいろいろ断わったのですが、主人の方からわたくしの方へ頼んで来まして、利兵衛を或るところへ呼んで、主人は手を下げないばかりに頼み、わたくしもそばから口を添えて、どうにかまあ納得《なっとく》させたんです。娘も案外素直に承知して、とどこおりなく祝言《しゅうげん》の式もすませ、夫婦仲も至極むつまじいので、まあよかったと主人も安心し、わたくしも蔭ながら喜んでいましたが、そのあくる年に娘は死にました」
「病死ですか」と、私はすぐに訊き返した。
「いいえ、なんでも六月頃でしたろうか、ある晩そっと家《うち》をぬけ出して不忍の池へ身を投げたんです。死骸が見付からないなんていうのは嘘で、蓮《はす》のあいだに浮きあがった死骸はたしかに山城屋で引き取りました。いっそ
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