停車場の少女
岡本綺堂
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)思召《おぼしめ》す
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)紡績|飛白《がすり》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ぎょっ[#「ぎょっ」に傍点]として
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「こんなことを申しますと、なんだか嘘らしいように思召《おぼしめ》すかも知れませんが、これはほんとうの事で、わたくしが現在出会ったのでございますから、どうかその思召しでお聞きください。」
Mの奥さんはこういう前置きをして、次の話をはじめた。奥さんはもう三人の子持ちで、その話は奥さんがまだ女学校時代の若い頃の出来事だそうである。
まったくあの頃はまだ若うございました。今考えますと、よくあんなお転婆《てんば》が出来たものだと、自分ながら呆れ返るくらいでございます。しかしまた考えて見ますと、今ではこんなお転婆も出来ず、またそんな元気もないのが、なんだか寂しいようにも思われます。そのお転婆の若い盛りに、あとにも先にもたった一度、わたくしは不思議なことに出逢いました。そればかりは今でも判りません。勿論、わたく
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