わず起ち上がって源三郎の袂《たもと》をとらえた。
「半さまもあのように言うてござれば、まあ、まあ、お待ちなされませ」
「ええ、うるさい。退《の》いておれ」
 源三郎は相手をよくも見定めないで、腹立ちまぎれに突き退けると、かよわいお染は跳ね飛ばされたようによろめいて、そこにある膳の上に倒れかかると、酒も肴も一度に飛び散った。半九郎もむっ[#「むっ」に傍点]とした。
「やい、源三郎。年下の者と思ってよいほどにあしらっていれば、言いたい三昧《ざんまい》の悪口、仕たい三昧の狼藉、もう堪忍がならぬぞよ。素直に手をさげて詫びて帰ればよし、さもなくば、おのれの襟髪を引っつかんで、狗《いぬ》ころのように門端《かどばた》へ投げ出すぞ」
 彼も生まれつきは短気な男であった。しかも酒には酔っていた。それでも普段から自分の弟のように思っている源三郎に対して、今まで出来るだけの堪忍をしていたのであるが、眼の前で自分の女を手あらく投げられた、自分の膳を引っくり返された。彼はもう料簡が出来なくなって、大きい声で相手を叱りつけたのである。源三郎も行きがかりで彼に無礼を詫びようとはしなかった。
「はは、そのような嚇《お
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