と思召《おぼしめ》す。我われ一同が遠からず京地を引払うに就いては、上《かみ》の御用は申すに及ばず、銘々の支度やら何やかやで、きのう今日は誰もが眼がまわるほどに忙がしい最中に、短い冬の日を悠長らしく色里の居続け遊び、わたくしの用向きは手前|一人《いちにん》が手足を擦り切らしても事は済めど、上の御用は一人が一人役、それでお前さまのお役が勤まりまするか、支配頭の首尾がよいと思召すか。京|三界《さんがい》まで一緒に連れ立って来て、弟に苦労さするが兄の手柄か、少しは御分別なされませ」
これが過日《このあいだ》から源三郎の胸に畳まっていた不平であった。現に兄は昨夜も戻らない。きょうも戻らない、出発まぎわにあってもまだ止《と》めどもなしに遊び歩いている兄の放埒には源三郎も呆れ果てた。年の若い彼はじりじりするほどに腹が立った。
今夜も荷作りの達しが来たが、自分と家来ばかりでは纏《まと》め方が判らない。さりとておとなしく待っていてはいつ帰るか知れないので、源三郎は焦《じ》れにじれて、自分で兄の在りかを探しに出た。折りからの時雨に湿《ぬ》れながらまず六条の柳町をたずねると、そこには兄の姿が見付からなか
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