た」
「出発の荷作りならよいように頼むぞ」
「わたくしには出来ませぬ」
同じ迎いでも、これはさっきの若党とは一つにならなかった。血気の彼は居丈高《いたけだか》になって兄に迫った。
「荷作りのこと御承知なら、なぜ早くにお戻り下されぬ。兄弟二人が沢山の荷物、わたくし一人《いちにん》にその取りまとめがなりましょうか。積もって見ても知れているものを……。さあ、直ぐにお起《た》ち下され」
彼は寝ころんでいる兄の腕を掴んで、力任せに引摺り起そうとするので、膝をかしているお花は見兼ねて支《ささ》えた。
「まあ、そのように手暴《てあら》くせずと……。市さまはこの通りに酔うている。連れて帰ってもお役に立つまい。お前ひとりでよいように……」
「それがなるほどなら、かようなところへわざわざ押しかけてはまいらぬ。じゃらけた女どもがいらぬ差し出口。控えておれ」
武者苦者腹《むしゃくしゃばら》の八つ当りに、源三郎は叱りつけた。叱られてもお花は驚かなかった。彼女は白い歯を見せながら、なめらかな京弁でこの若い侍をなぶった。
「お前は市さまの弟御《おととご》そうな。いつもいつも親の仇でも尋ねるような顔付きは、若い
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