今夜は私がおまえを渡してあげよう」
男は辞退したが、黄は肯《き》かなかった。
無理に彼をいだいて河を渡ると、むこう岸には大きい石があった。黄はあらかじめ家僕《しもべ》に言い付けて、その石の上に草をたばねて置いたのである。黄は抱いている男を大石に叩きつけると、男は悲鳴をあげて助けを求めた。灯《ひ》に照らして見ると、彼は青面《せいめん》の大きい※[#「けものへん+矍」、206−13]猿《かくえん》に変じていた。打ち殺してそれを火に燔《や》くと、その臭気が数里にきこえた。
その後、ここに怪しいことはなかった。
底本:「中国怪奇小説集」光文社文庫、光文社
1994(平成6)年4月20日初版1刷発行
入力:tatsuki
校正:kazuishi
2003年7月31日作成
青空文庫作成ファイル:
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