を登り、谷に下って石室《いしむろ》のなかにとどまった。王は悲しんで、ときどきその様子を見せにやると、いつでも俄かに雨風が起って、山は震い、雲は晦《くら》く、無事にその石室まで行き着くものはなかった。
それから三年ほどのあいだに、少女は六人の男と六人の女を生んだ。かれらは木の皮をもって衣服を織り、草の実をもって五色に染めたが、その衣服の裁ち方には尾の形が残っていた。盤瓠が死んだ後、少女は王城へ帰ってそれを語ったので、王は使いをやってその子ども達を迎い取らせたが、その時には雨風の祟《たた》りもなかった。
しかし子供たちの服装は異様であり、言葉は通ぜず、行儀は悪く、山に棲むことを好んで都を嫌うので、王はその意にまかせて、かれらに好《よ》い山や広い沢地をあたえて自由に棲ませた。かれらを呼んで蛮夷といった。
金龍池
晋《しん》の懐帝《かいてい》の永嘉《えいか》年中に、韓媼《かんおん》という老女が野なかで巨《おお》きい卵をみつけた。拾って帰って育てると、やがて男の児が生まれて、その字《あざな》を※[#「てへん+厥」、47−12]児《けつじ》といった。
※[#「てへん+厥」、47−
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